きっとNANIMONOにもなれないあなたへ。

踊り場の窓から 人並みを眺めていた
僕らはどこへ行こうか 階段の途中で

不確かな言葉を携えて 呼吸を揃えて初めまして
そんで愛されたのなら大歓迎 繰り返し向かえ遠く向こうへ

結局僕らはさ 何者になるのかな
迷い犬みたいでいた 階段の途中で

大胆不敵に笑ったって 心臓はまだ震えていて
それでもまたあなたに会いたくて 下手くそでも向かえ遠く向こうへ

大根役者でいいとして 台本通り踊れなくて
ただまっすぐ段を登っていけ わかっちゃいたって待ちぼうけ
みっともないと笑ってくれ 僕に名前をつけてくれ
踊り場の窓に背をむけて 前を見て向かえ遠く向こうへ

私が初めてこの曲をきいたのは、
去年の11月でした。
 
以前の記事で川村元気さん(怒り、君の名は、映画の何者のプロデューサー)のことを紹介しましたが、
何者という小説については、
朝井リョウさん(超天才なので知らない方は著作を全部読んでください。桐島、部活やめるってよの原作者)
の原作小説を読んでいて、
それはそれで衝撃を受けました。(今回はその話は割愛)

で、

先日ちょっとツテがあって、
きゃりーぱみゅぱみゅさんのイベントに顔を出したんですね。
 
きゃりーさんのイベントなので、周りはだいたい青文字系のファンが多い。
僕はというと、原宿系の文化はべつに嫌いじゃないんですが、
コアなファンかというとそうではなかった。

(中田ヤスタカさんについては、10年くらい前に、ちょうどcapsuleが売り出しはじめたころ、
 ダンスのイベントでよく曲を使っていました。かなり好き)
 
イベント自体はきゃりーさんの誕生パーティっていう趣旨だったんですが、
イベントの途中でこの曲が流れた。

それまでって結構、写真とったりなんだり、
周りも、「きゃーきゃーかわいいー!」みたいな感じでチャラチャラしていたんですが、
中田ヤスタカさんがこの曲をかけた瞬間、

空気が一瞬で変わって、
写真を撮っていた周りの人間が一人残らず黙りこくった。

本当に沈黙した。
1000人くらい集まった、まったく違うバックグラウンドを背負った人間が、
誰ひとり動かない。全員が音を聴き入っている。

まずそのライブDJとしての才能に衝撃を受けましたが、
それ以上に、

こんなに素晴らしい曲があるのかというくらい曲自体に感動しました。

もちろん曲自体は知っていました。

いや、

正確には情報としては頭に入っていたが、
心のなかから理解してはいなかった。

なぜこの曲がそこまで人の心をつかむのかって話。
作り手側も売り手側もぜひお読みになってください。

中田ヤスタカプロデュース曲、最高傑作

歌詞をつくったのは米津玄師さん。
中田ヤスタカさんの曲って、一般的にはメッセージ性のある曲って本当に少ないです。

(初期のcapsuleの曲には明確なメッセージが込められた曲も存在する)

いわゆるEDMって呼ばれるようなジャンルって、
基本的には単純にリズムや音自体の気持ち良さを追求した音楽なので、
変なメッセージを入れると寒いから。
(perfumeの曲とか、同じ単語をずっと繰り返してる曲多いよね?)

EDMが嫌いなひとたちって、
コンセプチュアルな考え方が好きだったり、
深く考えられるような曲が好きだったりするのよね。深みを重視するというか。

だからこういう音楽に対して抵抗がある人もいるんだと思うんだけど、
この曲の何がすごいって、

 
「これは、間違いなく自分のことを言っている。」
 
 
と誰にでも思わせる力を持っていること。
しかもとても平易な言葉で。

ユング心理学の言葉で、

「集合的無意識」

ってありますが、それを具現化している。
(ヒットを生む要因は全部これです)

もっというと、

何者という原作小説自体がもっている力と、
曲のもっている力が完全に一致している。

だれがみても、

「これは、ほかの誰でもない、俺のことを言っているんだ」

と思わせる。

こんなすごい曲は滅多にありません。
個人的には10年に一回くらいだと思う。

時代性と普遍性

映画の世界でよくいわれる言葉。

「みんな、心のどこかでは思っているんだけど、
 まだ言葉にはできていない」

ことを、

「空間と時間のなかに、その時代にもっともふさわしい伝え方で生み出す」

いうは簡単、だけどこれが何より難しい。そしてそこが何より面白い。

もちろん川村元気さんも朝井リョウさんも、
映画監督の三浦大輔さんもみーんなすごい。

だけど私がいちばん感動したのは、
じっさいにライブの現場でこの曲自体に偶然出会った人でさえ、
たちまち取り込んでしまう言葉と音楽の力です。

 
これがクリエイティブの力だ!
と確信しました。

きっとNANIMONOにもなれないあなたへ

肩書き、
キャリア、
実績、
今どこにいるのかとか、
お前は誰なんだ、
なにをもってお前なんだっていうのは、
なんだか思春期のモラトリアムの話みたいだけど、
じっさいは大人になってからのほうが考えること多いんじゃないかな。

なんだかそういうモラトリアムに対するひとつの答えが、
この曲に込められているような気がしました。
 
僕らはきっとNANIMONOにもなれないかもしれないけど、
だからこそどこにだって行ける。

ぜひ聴いてみてね。

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